神道式の葬式【神葬祭】とは
神葬祭の特徴
日本独自の宗教である「神道(しんとう)」の形式で行うお葬式を、「神葬祭(しんそうさい)」と呼びます。現代の日本では仏教式のお葬式が一般的ですが、この神道式のお葬式も全国で広く営まれています。
神話の時代から続く、日本固有のお葬式
神葬祭の歴史は非常に古く、日本最古の歴史書である『古事記』や『日本書紀』の神話にまでさかのぼります。
日本最古の歴史書である古事記には、このように書かれています。
「喪屋(もや)を作りて、河雁(かわかり)を岐佐理持(きさりもち)とし、鷺(さぎ)を掃持(ははきもち)とし、翠鳥(そにどり)を御食人(みけびと)とし、雀(すずめ)を碓女(うすめ)とし、雉(きぎし)を哭女(なきめ)とし、如此行ひ定めて、日八日夜八夜を遊びき(喪屋を建て、雁に葬送のときに死者の食物を頭にのせて行く者をさせ、鷺に清め役、かわせみに死者に供える食事を作る役目、雀に米つき、雉に悲しみを演ずる者の役とそれぞれの役割を決めて、八日八夜の間、歌舞をしました)」
(引用:神社本庁『神葬祭』)
つまり、故人が亡くなると喪屋を作り8日間喪に服したことが書かれてあります。この葬儀の形式は仏式とは異なるものであり、日本固有の葬儀のあり方としてうかがい知ることができます。
故人は「家を守る神様」になる
仏教のお葬式では、故人は極楽浄土(あの世)へ旅立つと考えられています。しかし神道では、故人の魂は別の世界へは行かず、家にとどまって子孫を見守る「守護神(しゅごしん)」になると考えられています。
そのため神葬祭では、亡くなってすぐに「遷霊祭(せんれいさい)」という儀式を行います。これは、仏教の「位牌(いはい)」にあたる「霊璽(れいじ)」というものに、故人の魂をうつす儀式です。これにより、故人を家の守り神として長く大切にお祀りしていくことになります。
祭詞で故人の人生を振り返る
お葬式の中で神職が読み上げるお祈りの言葉を「祭詞(さいし)」と呼びます。
この祭詞の最大の特徴は、定型文ではなく、故人の生前のストーリーが盛り込まれることです。「どんな人柄だったのか」「どんな学生時代を送ったのか」「社会人としてどう活躍したのか」「周囲とどんな絆を築いてきたのか」、神主が毎回、その方の人生に合わせて世界に一つだけの祭詞を書き上げます。
そのため、参列者の中には「こんなに素敵な人生を送っていたんだな」と、祭詞を聞いて初めて知る方も少なくありません。故人の生前の歩みに思いを馳せ、深く偲ぶことができる温かい儀式です。

神葬祭の歴史
初登場:古事記(712年編纂)
神葬祭の様子が歴史上初めて記録されているのは、和銅5年(712年)に完成した日本最古の歴史書『古事記』です。上・中・下の全三巻からなるこの書物に、日本古来のお葬式の様子が記されています。
(参照:國學院大學「古事記について」)

奈良時代:仏教式が広まる
奈良時代に仏教が日本へ伝わると、葬儀は仏教式で行われることが多くなりました。
この時代には仏教と国家鎮護の思想とが結びつき、仏教は天皇や貴族たちの権力を強める役割を担うようになりました。
そのために、仏教の広まりとともに葬式においても仏教式が広まっていきました。
江戸時代:途絶えかけた神葬祭の復活の兆し
江戸時代に入ると、幕府はキリスト教を禁止するため、国民全員を強制的にどこかのお寺の信徒にさせる「寺請制度(てらうけせいど)」を作りました。これにより、日本人は事実上全員が仏教徒として扱われるようになります。
当時は、神社の神主でさえ仏教式でお葬式をしなければならないほどでした。
しかし、この状況に対して神職たちから「神道本来の葬儀をさせてほしい」と強い抗議が起こります。その結果、1785年(天明5年)になってようやく「神職本人とその跡継ぎだけは神道式で葬儀をしてよい」と許可が下り、神葬祭復活の兆しが見え始めました。
(参考:國學院大學学術情報リポジトリ『大教宣布運動」と神葬祭』)
明治時代:再び庶民に広まる
1868年(明治元年)、明治政府はこれまで混ざり合っていた神道と仏教を明確に分ける政策を打ち出します。政府が神道を国の中心的な宗教に位置づける中で、「神葬祭こそが日本本来のお葬式の姿である」と推奨されるようになりました。
これによって、神道式でのお葬式が公的にも正当なものとして認められるようになり、徐々に一般の庶民の間にも神葬祭が再び広まっていったのです。
(参考)國學院大學学術情報リポジトリ『「大教宣布運動」と神葬祭』
神葬祭で知っておかなければまずいマナー
香典袋の選び方と書き方

不祝儀袋を使用する
神道式のお葬式に持参するお金(玉串料)を包む袋は、「黒白」または「双銀(銀色のみ)」の水引で、「結び切り」のものを使用します。紅白はお祝い事用なので絶対に避けましょう。コンビニなどでも手軽に購入できます。
表書き(表面の上段)には、「玉串料(たまぐしりょう)」「御神前(ごしんぜん)」「御霊前(ごれいぜん)」「御榊料(おさかきりょう)」のいずれかを記入します。
記入には「薄墨」を用いる
名前や金額を記入する際は、真っ黒な墨でなく、薄墨を使用することでより丁寧な印象を与えることができます。
なぜ薄墨を使用するのかについては諸説ありますが、「故人を悲しむ気持ちで涙が滴り墨が薄くなってしまった」という説や、「急いで駆けつけたので墨をする時間が充分になかったから」という説もあります。
包むお札(お金)の準備
使用感のあるお札を使用する
お札は、折り目のない新札を使うのでなく、使用感のあるお札を使用するようします。新札で香典を持っていくことで、あたかもその人の死を待ち構えていたのかと捉えられてしまうことを避けるために、葬儀の香典には使用済みのお札を準備しましょう。
新札に少し折り目をつける

もし新札しか手元にない場合や、「あまりにボロボロのお札を渡すのは失礼では?」とためらわれる場合は、新札に少し折り目をつけてから包むという方法がおすすめです。
これなら、受け取る側もきれいなお札で気持ちがよく、同時に「急いで用意した」という礼儀も示すことができます。お札の中央で二つ折りにするか、角の部分だけを少し折って袋に入れましょう。
手水の作法
葬儀の際の手水は、普段神社で行う作法と変わりはありません。
まず柄杓を右手で持ち、左手を洗います。
つぎに、左手で柄杓を持ち、右手を洗います。
つぎに、柄杓を右手で持ち、左手に水をためて、口をすすぎます。
つぎに、今一度左手を洗います。
つぎに、両手で柄杓を立てて、柄の部分を水で流します
また、予めハンカチを用意しておくと、手水後にスムーズに手を拭くことができます。
(参考)東京都神社庁『[神社参拝の作法]手水の仕方』
玉串拝礼

玉串拝礼は、仏教の「お焼香」にあたる神道特有の儀式です。ここで最も注意すべきなのは、拍手の音を鳴らさないことです。
まずは渡された玉串を時計回りに回し、玉串の根本を御霊前の方向へ向けます。
つぎに、玉串をお供え台の上に置きます。
この時に、台の上に他の玉串が既にたくさん置いてあって置き場がない場合は、そのまま他の玉串の上に重ねて置きます。
つぎに、二礼二拍手一礼の作法で拝礼します。
この時に、注意点として、拍手をする際に「パンッ」と音を鳴らさないようにしましょう。
音を鳴らす拍手は「めでたい」という意味が含まれていますので、葬儀の場では音を鳴らさずにそっと手を合わせる「しのび手」を行いましょう。
(参考)神社本庁公式チャンネル『玉串拝礼の作法』
お悔やみの言葉
神道式の葬儀では、仏教用語を用いずにお悔やみの言葉をお伝えするのが適切です。
「ご冥福」「成仏」「ご供養」これらの言葉は仏教用語、「他界」「永眠」はキリスト教用語ですので、注意しましょう。
神道式のお悔やみの言葉の例としては、「〇〇様が安らかに眠られますよう、心よりお祈り申し上げます」「御霊(みたま)の安らかならんことをお祈り申し上げます」
このような表現であれば、神式のマナーに沿いながら、故人を悼む温かい気持ちがしっかりと伝わります。
神道式のお葬式へ参列する際に失敗しやすいマナー
神道式のお葬式(神葬祭)には、普段あまり馴染みのない作法があるため、悪気はなくてもつい間違えてしまうことがあります。ここでは、参列者が特に失敗しやすいポイントとその対策をご紹介します。
拍手の音を鳴らしてしまう
神社でのお参りに慣れていると、無意識のうちに「パンッ」と音を鳴らして拍手を打ってしまいがちです。慣れない場で緊張していると、なおさら間違えやすいポイントです。
お葬式では音を出さない「しのび手」が基本ですが、万が一音を鳴らしてしまっても、慌てなくて大丈夫です。そのまま静かに「しのび手」に切り替えて拝礼を最後まで行いましょう。拝礼を終えた後、ご遺族(喪主)へ向けて軽く会釈をして礼儀を示せば失礼にはあたりません。
数珠を使用して手を合わせてしまう
「お葬式=数珠(じゅず)」というイメージが強いかもしれませんが、数珠は仏教の道具(お経や念仏の数を数えるためのもの)です。そのため、神道のお葬式では数珠は一切使用しません。
手には何も持たずに、そのまま両手を合わせるのが神道の正しい作法です。うっかり持参してしまった場合や、会場で無意識に取り出してしまった場合は、慌てずに静かに鞄の中へしまいましょう。
玉串のお供え作法がわからない
仏教のお葬式で行う「お焼香(しょうこう)」にあたるのが、神葬祭の「玉串拝礼(たまぐしはいれい)」です。参列者が順番に前へ出て行うため、やり方が分からないと戸惑ってしまうかもしれません。
しかし、この玉串の作法は、神社の厄払いなどでご祈祷(きとう)を受ける際の作法と同じです。一度覚えてしまえば、その後の人生でも幅広く役立ちます。
葬儀の宗派を間違えてしまう
「お葬式はとりあえず仏教だろう」と思い込んで準備を進めると、持参した香典袋が仏教用(蓮の花の絵柄など)だったり、宗派が異なるお悔やみの言葉をかけてしまったりと、会場で気まずい思いをすることになります。
訃報(ふほう)や葬儀の案内状には、多くの場合「神式」「仏式」「キリスト教式」といった形式が明記されていますので、まずは案内状を隅々まで確認しましょう。もし記載がない場合やご自身で判断できない場合は、直接「葬儀社」や「会場」に問い合わせるのが最も確実です。特に香典袋は事前に用意しておくものなので、宗教・宗派の事前確認は怠らないようにしましょう。
神葬祭に着ていくべき服装

【参列者編】
本来のお通夜は「平服」で駆けつけるのがマナーだった?
友人や知人のお通夜に参列する際、「急な知らせを聞いて、取るものもとりあえず駆けつけた」という気持ちを表すために、昔は地味な平服(普段着のスーツなど)で向かうのが本来のマナーとされていました。しかし現代ではこうした考え方は薄れつつあり、最初から喪服を着て参列しても失礼にはあたらないのが一般的です。
現代では「喪服」で問題ありません
日中の告別式には参列できず、お通夜(神道では「通夜祭」と呼びます)だけ弔問に訪れる場合でも、現代では喪服を着ていくことが増えています。男性であればブラックスーツなどの略礼服、女性であれば黒のフォーマルなワンピースやスーツを着用しても、マナー違反になることはありません。
(参考)神社本庁『神葬祭に参列する際の服装について』
【喪主・ご遺族編】
格式の高い「喪服」や「和装」を着用する
自分自身が故人のご遺族である場合、お葬式を主催する側(ホスト側)になります。主催側は、参列してくださる方々に誠意を示すため、参列者と同等か、それ以上に格式高い服装を選ぶのがマナーです。そのため、一般的な平服ではなく、きちんとした喪服や正式な和装を着用しましょう。
周囲の親族と服装の「格」を合わせる配慮も大切
自分の服装だけでなく、一緒に参列するご親族と服装のバランスを取ることも大切です。例えば「一般の親族は、喪主やご遺族より控えめな服装にする」「遺族全員が洋装(スーツなど)なら、自分も和装ではなく洋装に揃える」といった配慮が必要です。一人で勝手に決めず、事前に親族同士で「当日は何を着るか」を話し合っておくと、場違いになるのを防ぐことができます。
【共通編(参列者・ご遺族共通)】
華美なアクセサリーや「殺生」を連想させるものはNG
お葬式の場では、派手な印象を与える装飾品は控えるのがマナーです。身につけて良いアクセサリー類は、結婚指輪、シンプルな腕時計、そしてパールのネックレス程度に留めましょう。
また、動物の革で作られたバッグやコート、ファーや羽毛(ダウン)など、動物の命を奪うこと(殺生)を連想させる素材も、お葬式の場ではふさわしくありませんので避けることがマナーです。
子どもは「学校の制服」または「落ち着いた色の服」を
子ども用の喪服がない場合は、通っている保育園や幼稚園、学校の「制服」を着せましょう。学生にとって制服は正式な礼装(フォーマルウェア)ですので、お葬式に着ていっても全く失礼にあたりません。
もし制服がない場合は、白いシャツやブラウスに、黒や紺などの落ち着いた色のズボン・スカートを合わせ、暗いトーンのジャケットやカーディガンを羽織るなど、周囲へ配慮した控えめな装いを心がけましょう。
(参考)『学校における制服の成立史〜教育慣行の歴史的研究として〜』国立教育研究所 佐藤秀夫
神葬祭の香典金額の相場
仏式のお葬式でお渡しする「お香典」ですが、神道式では「玉串料(たまぐしりょう)」や「御榊料(おさかきりょう)」と呼びます。ここでは、故人との関係性ごとに包む金額の一般的な目安をご紹介します。
親族の相場
故人との血縁の近さにより変動します
親族が包む玉串料の金額は、故人との血縁関係が近いほど高くなる傾向があります。
一般的な玉串料の相場は以下の表を参考にしてみてください。
※全日本冠婚葬祭互助協会による平成23年度アンケートによると、「親戚関係」を除いては一律ほぼ5,000円となっており、「親戚関係」は血縁関係により変化しております。
| 親や兄弟など近い親族 | 30,000円〜100,000円 |
| 2親等以内の親族 | 30,000円〜50,000円 |
| 3親等以上の親族 | 10,000円〜30,000円 |
友人の相場
[5,000円]を包むケースが最も一般的
| 友人・知人 | 5,000円〜10,000円 |
故人の友人・知人である場合、5,000円を包む方が最も多いというデータが出ています。
(参考:全日本冠婚葬祭互助協会による平成23年度アンケート)
ただし、金額に関しては「絶対にこの金額でなければならない」という明確なルールがあるわけではありません。お金をお供えすることは、故人への哀悼の気持ちを表現する大切な所作です。ご自身の無理のない範囲で、一般的な相場と故人への思いを踏まえて金額を決めるとよいでしょう。
仏式葬儀との違い
現在の日本で最も広く行われている仏教式のお葬式と、神道式の「神葬祭」にはどのような違いがあるのでしょうか。死生観といった根本的な考え方から、具体的な作法、費用感までを分かりやすく比較表にまとめました。
| 神道式(神葬祭) | 仏教式(仏式葬儀) | |
| 死生観 | 故人は家の守護神となり子孫を見守る | 故人は仏様になり極楽浄土へ旅立つ |
| 葬儀の目的 | 故人を祀り、穢れを祓って日常を取り戻す | 故人の冥福を祈り、極楽浄土へ送る |
| 儀式の違い | 祭詞奏上・玉串奉奠(たまぐしほうてん) | 読経・お焼香 |
| 線香・焼香 | 使わない | 使う |
| 参列者の作法 | 数珠は使わない。「しのび手」で拝礼する | 数珠を持ち、手を合わせてお焼香を行う |
| 葬儀場所 | 自宅やホール。神社では行わない | 寺院・斎場・自宅など |
| 用語 | 「御霊の安らかならんことを」など | 「ご冥福をお祈りします」など |
| 仏壇・御霊舎 | 御霊舎(みたまや)でお祀りする | 仏壇でお祀りする |
| 費用 | 玉串料(20万円前後)
(調査:警固神社周辺10神社) |
お布施(平均47.3万円)
(参考)第11回葬儀に関するアンケート調査報告書 |
| お墓 | 墓石の先端が尖っている。「〇〇奥津城」と記す | 墓石の先端が平らや丸い。「〇〇家之墓」「南無阿弥陀仏」などと記されている |
| お墓の場所 | 神社の敷地には作らず、霊園や公営墓地が中心 | 寺院墓地内もしくは霊園など |
宗教者へのお礼(費用)の比較
神道式:比較的安価な場合が多い
お葬式の会場(葬儀社)に支払う費用はどちらの宗教も同じく発生しますが、神主など宗教者へお渡しするお礼の金額には差があります。
神道式の場合、玉串料の相場は20万円前後と比較的低価格に抑えられる傾向があります。また、仏教の「戒名(かいみょう)」にあたる費用などもなく、玉串料だけで支払いが完結することが多いため、追加費用がなく分かりやすいのが特徴です。
仏式:お布施のほか、戒名料が必要になることも
仏教式でお坊さんにお渡しするお布施の平均金額は47.3万円(参考:第11回葬儀に関するアンケート調査報告書)と、神道式と比較すると高価になる傾向があります。
お布施に加えて「戒名代」が必要になることも多く、つけたい戒名のランクによって金額が大きく変わることもあります。お布施には明確な定価がないため、金額に不安がある場合はお寺に直接確認するのが確実です。
お墓の違い

神道式
神道では、お墓を神社の境内に作ることはありません。神社の所有する離れた墓地か、民営・公営の霊園などを利用します。
墓石は先端が尖った形をしているのが特徴で、表面には「〇〇家之墓」ではなく「〇〇奥津城(おくつき)」と彫られます。「奥津城」には奥深く静かな場所という意味があります。
仏式
お寺の境内にお墓を建てることができるのが仏教式の特徴です。もちろん境内に限らず、民営・公営霊園も利用可能です。
墓石の先端は平ら、もしくは丸みを帯びた形をしています。墓石の表面には「南無阿弥陀仏」といった言葉や「〇〇家之墓」、その他にも故人の戒名が記されるのが一般的です。
葬儀を行う場所の違い
神道式
神道には「死は穢れ(けがれ=気枯れ。生命力が枯渇した状態)である」という考え方があるため、神聖な場所である神社の敷地内でお葬式を行うことはありません。そのため、葬儀社のホールを使用するか、故人のご自宅で行うのが基本となります。
仏式
葬儀社のホールやご自宅のほか、お寺の本堂など敷地内でお葬式を行うことができます。お墓もお寺の敷地内にあることが多いため、お葬式からその後の供養まで、すべてお寺の中で完結できるのはメリットと言えます。
用語の違い
神道と仏教で使われる言葉が違うのは、「人が死んだ後、どうなるのか?」という根本的な考え方が異なるためです。それぞれに合った言葉を使うよう注意が必要です。
| 用語の意味 | 神道式の用語 | 仏教式の用語 |
| 葬儀の名称 | 神葬祭(しんそうさい) | 仏式葬儀(ぶっしきそうぎ) |
| 前夜の儀式 | 通夜祭(つやさい) | 通夜(つや) |
| 当日の儀式 | 葬場祭(そうじょうさい) | 葬儀式・葬儀 |
| 故人の魂を祀る札 | 霊璽(れいじ) | 位牌(いはい) |
| お供えするお金 | 玉串料(たまぐしりょう) | 御香典(ごこうでん) |
| お参りの作法 | 玉串奉奠(たまぐしほうてん) | 焼香(しょうこう) |
| お祈りの言葉 | 祭詞奏上(さいしそうじょう) | 読経(どきょう) |
| 節目の儀式 | 霊祭(みたままつり) | 回忌法要・年忌法要 |
| お祈りの作法 | 拝礼(はいれい) | 合掌(がっしょう) |
| 亡くなること | 帰幽(きゆう) | 他界、成仏 |
神道式の用語
神道では、故人を「神様」としてお祀りするため、お通夜や告別式といった儀式をすべて「〇〇祭(さい)」と呼び、神様への神事として執り行うのが特徴です。また、「帰幽(きゆう=幽世に帰る)」など、清らかで厳かな表現がよく使われます。
仏式の用語
「ご冥福(死後の幸福)」「成仏(仏になる)」など、故人が極楽浄土へ無事に旅立てるように、という願いが込められた言葉が多く使われます。
神葬祭の流れ

故人が亡くなる〜お葬式まで
帰幽奉告(きゆうほうこく)
故人が亡くなったことを、家の神棚や祖霊社にご報告する儀式です。報告が終わった後、神棚の正面に白い和紙を貼って一時的に封印します。これを「神棚封じ」と呼びます。

枕直しの儀(まくらなおしのぎ)
ご遺体を安置するお部屋へ移し、北枕(頭を北側に向ける)で仰向けに寝かせます。お顔に白い布をかけ、枕元には屏風や守り刀(魔除けの刀)を置き、明かりを灯します。
納棺の儀(のうかんのぎ)
ご遺体を拭き清めて髪を整え、「神衣(かむい)」と呼ばれる神道式の死装束を着せてから、静かに棺へと納めます。
お葬式(通夜〜火葬)
通夜祭(つやさい)
通夜祭は、告別式(神道では葬場祭と呼びます)の前夜に行われる儀式です。夜通しで故人のそばに寄り添い、その御霊(みたま)をなぐさめます。
実はこの儀式は、「殯(もがり)」という日本で一番古いお葬式の形が起源になっており、現在でも天皇家の儀式として受け継がれています。古来の日本人は「もしかしたら生き返るかもしれない」という願いを込めて、亡くなった方と一緒に時間を過ごしていました。通夜祭はその名残であり、神道においても「生きている時と同じように、大切に礼儀を尽くして接する」ための重要な時間とされています。
参考:北海道神社庁『人生礼儀・人生のまつり』
発柩祭
「出棺祭(しゅっかんさい)」とも呼ばれます。棺を火葬場へ送り出す前に、これから告別式と火葬へ向かうことを故人に報告し、祈りを捧げます。
葬場祭(そうじょうさい)並びに遷霊祭(せんれいさい)
仏教の「告別式」にあたる、故人に最後のお別れを告げる最も重要な儀式です。葬儀会場や、故人のご自宅で行われます。
また、この時に「遷霊祭」という重要な儀式も同時に行います。遷霊祭は故人の魂を「霊璽(れいじ=仏教の位牌にあたるもの)」に移し留める儀式です。お葬式がすべて終わった後、この霊璽を家にお祀りし、家を守る守護神となっていただきます。
なお遷霊祭は、前夜の通夜祭と合わせて行う場合もあります。地域によって異なる場合がありますので、事前に確認しておきましょう。
火葬祭(かそうさい)
火葬場で行われる、亡骸(なきがら)と対面する最後の儀式です。お別れを告げた後に火葬を行い、お骨を骨壺に納めます。その後は、お墓に納骨するまでの約50日間、ご自宅で安置します。
帰家祭(きかさい)・十日祭
火葬を終えて自宅(または葬儀会場)に戻った際に行う儀式で、お葬式が無事にすべて終了したことをご報告します。
翌日以降
五十日祭・忌明け
お葬式から50日目に行う儀式で、仏教の「四十九日法要」にあたります。この儀式をもって「忌明け(喪に服す期間が終わること)」となります。
納骨祭(のうこつさい)
ご遺骨をお墓に納める儀式です。現代では、五十日祭に合わせてそのまま同日に行われるケースが多く見られます。
霊前祭
仏教の「法要」にあたる儀式です。翌日祭から始まり、十日、二十日、三十日、四十日、五十日、百日、一年祭と区切りごとに行います。
日数をかけて何度も儀式を繰り返すことで、ご遺族の悲しみを少しずつ癒やすとともに、故人の魂を磨き、立派な家の守護神になっていただけるようお祈りします。
祖霊祭
亡くなってから一定の年数が経った節目に行う儀式です。三年、五年、十年、二十年、三十年、四十年、五十年、百年…と続き、以後は百年ごとに、ご先祖様を大切に思い慕うお祭りを長く続けていきます。
自分の家系が神道式か判別する方法と、判別後にやるべきこと
自分の家系がどの宗教・宗派に属しているのかを知らなければ、いざという時にどうしていいのかわからず、困った事態になってしまいます。
ここでは、ご自身の家系が神道なのか、それ以外の宗教なのかを簡単に判別する方法と、その後の備えについてお伝えします。
自分の家系が神道か判別する方法
自宅に祖霊舎があるか確認する
ご自宅に祖霊舎がある場合は、神葬祭(神道式)の家系であると判断できます。万が一の際には、懇意にしている神社や地域の氏神(うじがみ)さまに相談しましょう。一般的な「神棚」は仏教の家系でも祀られている場合があるため、祖霊舎の有無を確認します。
もし氏神となる神社がわからない場合や、近所の神社に神職が常駐しているかわからない場合は、各都道府県の「神社庁」に問い合わせることで教えてもらえます。連絡先はインターネットで「〇〇県神社庁」と検索すると簡単に調べられます。
一方、ご自宅に「仏壇」がある場合は、神道ではなく仏教のいずれかの宗派となります。その場合は、ご実家の菩提寺(ぼだいじ)などに相談してみましょう。

お盆などの行事は神社の神職に依頼しているのか確認する
お盆や法要などの行事を依頼している馴染みの神社やお寺があるかどうかも、家系の宗教・宗派を確認する重要な手がかりです。特に仏教は多くの宗派に分かれているため、日頃からお世話になっている神社や菩提寺を把握しておくことが最も確実な方法と言えます。
事前に馴染みの神社やお寺がわかっていれば、いざ自身が葬儀を執り行う立場になった際、具体的な手順について前もって相談することができます。やるべきことをあらかじめ整理しておくことで、万が一の時にも焦らず落ち着いて対応できるでしょう。
先祖のお墓に彫刻されている文字を確認する
ご先祖様のお墓に彫られている文字を見ることでも判別できます。
墓石に「〇〇家奥津城」「〇〇家奥都城(おくつき)」と書かれている場合は神道式のお墓です。「〇〇家之墓」「南無阿弥陀仏」などと彫られていれば仏教式とわかります。
(参考)神社本庁『神道のお墓』
判別後にやっておくべきこと
近所の神社に手順を確認しておく
家系が神道式だと判明し、馴染みの神社がある場合は、万が一の際の手続きや流れについて事前に相談しておきましょう。葬儀は突然訪れるものです。神社側にとっても、あらかじめ相談を受けていれば、いざという時にゆとりを持ってご奉仕していただくことができます。
葬儀会場を比較しておく
いざという時、葬儀の準備にかけられる時間はあまり多くありません。あらかじめ葬儀に対応できる葬儀会社を何社かピックアップし、アクセスの良さ、会場の設備、費用などを比較検討しておきましょう。事前に準備をしておくことで、焦らず、納得のいく形で故人を丁寧にお見送りすることができます。
神葬祭の準備と進め方
喪主の決め方
明確な決まりはありませんが、一般的には配偶者が務めます。配偶者が不在の場合や高齢で負担が大きい場合は、お子様が務めるのが基本です。長男など直系男子が務めることが多いですが、女性でも差し支えありません。親族が誰もいない場合は、親しい友人や知人が務めることも可能です。
葬儀日程の決め方
基本的には、亡くなった翌日または翌々日に速やかに執り行います。
近年は予約が埋まっていることも多く、亡くなってから数日後になるケースも珍しくありません。また、地域によっては「友引」の日に葬儀を避ける風習もあるため、状況に合わせて日程を調整しましょう。
死亡届・埋葬火葬の認可手続きの方法
死亡届は、亡くなった日から7日以内に、故人の死亡地・本籍地、または届出人の所在地の役所へ提出することが法律で義務付けられています。
しかし現実には、ご遺体を火葬する際に役所発行の「火葬許可証」が不可欠となるため、7日という期限に関わらず、葬儀前に速やかに提出するのが一般的です。具体的な手続きとしては、役所の窓口へ死亡届を提出して火葬許可証の交付を受け、それを火葬当日に火葬場へ提出するという流れになります。
多くの場合は、葬儀会社が代行して手続きを行ってくれますので、確認しておきましょう。
(参考)法務省HP『死亡届』
(参考)厚生労働省HP『墓地、埋葬等に関する法律の概要』
神職、用具、斎場舗設などの手配
具体的な準備は葬儀会社と打ち合わせながら進めます。神職へのご依頼は、日頃からお世話になっている神社(氏神さま)がある場合はご自身で直接連絡し、特にない場合は葬儀会社に手配を依頼することも可能です。神道式の祭壇や必要な用具類は、基本的に葬儀会社が用意してくれます。
葬場、墓所、火葬場の決め方
葬儀会社と打ち合わせの上で決定します。
故人の生前の希望、予想される参列者の人数、交通アクセスの良さなどが会場選びの重要なポイントとなります。
参列者への案内、連絡
ご逝去から葬儀までは時間がないため、迅速に伝達できる手段を選びます。親族や特に親しかった方に対しては、最も確実な連絡手段である電話を使って直接伝えるのが基本です。一方で、メールやLINEは複数人へ素早く連絡できる利点がある反面、相手がすぐに内容を確認したかどうかが分からないというデメリットがあります。また、SNSを利用して訃報を知らせる場合は、情報が意図しない範囲まで拡散してしまうリスクがあるため、公開範囲の設定など取り扱いには十分な配慮が必要です。
終了後のやること
葬儀が無事に終了した後は、お世話になった方々への挨拶回りや形見分けを行います。葬儀の受付を手伝ってくれた方や、故人の会社、ご近所の方へはお礼のご挨拶をしましょう。一般の参列者へは、当日に会葬礼状をお渡ししているため改めて出向く必要はありません。
形見分けは、神道における忌明けの儀式である「五十日祭(ごじゅうにちさい)」を過ぎてから遺品整理の際に行うのが一般的です。ただし、目上の方へ形見を贈ることは失礼にあたる場合もあるため、慎重に配慮しましょう。
(参考) 一般社団法人全日本冠婚葬祭互助協会『お葬式のマナー』
忌中・喪中の期間(服忌)について
| 死亡者 | 忌(き) | 服(ふく) |
| 父 母 | 50日 | 13月 |
| 夫の父母 | 30日 | 150日 |
| 祖父母 | 30日 | 150日 |
| 曾祖父母 | 20日 | 90日 |
| 兄弟姉妹 | 20日 | 90日 |
| 甥 姪 | 3日 | 7日 |
| 夫 | 30日 | 13月 |
| 妻 | 20日 | 90日 |
| 子 | 20日 | 90日 |
| 孫 | 10日 | 30日 |
(引用)東京都神社庁『神葬祭』
故人が亡くなると、ご遺族は「服忌(ぶっき)」という期間に入ります。「忌」とは故人のおまつりに専念し、穢れを避けて身を慎む期間、「服」とは故人への哀悼の気持ちを表し、喪に服す期間のことを指します。
この日数は地域の慣習によって異なる場合がありますが、一般的には「五十日祭まで」を「忌」の期間、「一年祭まで」を「服(喪中)」の期間とします。
「忌」の期間である50日を過ぎれば忌明けとなり、原則として神社の参拝や、家庭の神棚のおまつりを再開しても差し支えないと考えられています。
(参考)神社本庁『服忌について』
葬儀費用を抑える方法
葬儀費用の平均は約120万円
経済産業省が発表している「経済産業省:特定サービス産業動態統計調査(2024年度)」をもとに算出すると、現在の葬儀費用の平均は「約120万円」となります。
これは、全国の葬儀業者の年間総売上高を年間の取扱件数で割って導き出された客観性の高い数字です。ただし、この平均額を参考にする際には、あらゆる形式のお葬式がすべて合算されているという点に注意しなければなりません。近年は葬儀の多様化が進み、ごく身内だけで行う「家族葬」や、火葬のみで済ませる「直葬」といった費用を抑えた形式が急増しています。約120万円という数字のなかには、こうした数万円から数十万円で済む低価格なプランが多く含まれているため、広く一般の参列者を招く従来の「一般葬」を想定した場合には、実際の費用はこの平均額よりも高くなるのが一般的です。
葬儀費用は規模や形式によって大きく変動するため、この約120万円という数字はあくまで業界全体の目安として捉え、実際の検討にあたっては「どのような形でお見送りしたいか」を優先して具体的なプランや費用を確認することが大切です。
葬儀費用を安く抑える方法
複数葬儀会社から相見積もりを取る
複数の会社から相見積もりを取ることは、費用を適正に抑えるための基本かつ有効な手段です。いざという時は時間にゆとりがないため、つい近所の葬儀会社一社にそのまま依頼してしまいがちです。しかし、複数の選択肢を比較検討することは、費用面だけでなく、故人をより丁寧にお見送りできる信頼できる会社を見つけることにもつながります。万が一の際に焦らないよう、平常時から少しずつリサーチしておくことが大切です。
葬儀の規模を抑える
直接的に費用を抑える方法として、参列者の人数や祭壇の大きさなどといった葬儀の規模を小さくすることも挙げられます。故人の生前の立場や交友関係にもよりますが、ご本人の遺志やご家族の希望を尊重しつつ、「家族葬」など小規模な形式を検討してみるのも一つの手段です。